逆VIPと世界戦闘力に対する考察

突然ですが、皆さんは「逆VIP」という言葉をご存知でしょうか?スマブラSPでオンライン対戦をやっている方は一度は聞いたことがあると思います。そして、中には「なぜ逆VIPなんて仕組みが存在するんだろう?」と疑問に思っている方もいるでしょう。

そこで、この逆VIPとそれに大きく関係する世界戦闘力について考察していきたいと思います。

目次

逆VIPとは?

まずはじめに、この記事内における逆VIPを定義しておこうと思います。

そもそも逆VIPは公式の用語ではなく、一般的には「世界戦闘力が非常に低く、勝ってもほとんど変動がない世界戦闘力帯」という意味で使われています。公式の用語ではないため、明確なボーダーは存在せず、VIPのようにその世界戦闘力帯に到達しても特に表示はありませんが、2022年10月現在は220万前後がボーダーになっているようです。

世界戦闘力とは?

逆VIPの定義でも話しましたが、逆VIPには世界戦闘力が非常に関係しています。そしてこの世界戦闘力は逆VIPとは違って公式の用語であり、以下のように定義されています。

世界中の同じモードをプレイした人々の中で、スコアや強さがどのくらいの人数を上回っているかを表したものです。300,311人より上なら、世界戦闘力は「300,312」になります。大きな数字ほど強いプレイヤーということになります。

しかし、この「スコアや強さがどれぐらいの人数を上回っているか」はどのように測っているのでしょうか?例えば勝ち数や勝率などが挙げられると思いますが、どちらも高ければ必ずしも強いというわけではありません。勝ち数であれば多くやっている人ほど有利になりますし、勝率であれば当たる相手のレベルに左右されます。そのため、これらを強さの指標として用いるのは適切ではありません。
では何を用いているのかというと、これは憶測になりますが、「イロレーティング」を用いている可能性が高いと考えています。

イロレーティングとは?

スマメイトでも「レート」という言葉は使われていますが、これは「イロレーティング」を指しています。

イロレーティング(Elo rating) とは、対戦型の競技(2人のプレイヤーまたは2つのチームが対戦して勝敗を決めるタイプの競技)において、相対評価で実力を表すために使われる指標の一つ。
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例えば100m走のような絶対値を競う競技では、その絶対値(例えば100m走のタイム)が試合の結果となるので、これをそのまま実力の基準として使うことができる(自己ベストタイムなど)。しかし、チェスやサッカーのような対戦型の競技では、試合の結果は勝敗であるから、そのままでは実力を表すことができない。そこで、勝敗を実力の指標に変換する工夫が必要となる。

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イロレーティングは、平均的強さのプレイヤーと対戦したときに予想される勝利勝率を数学的に推計し、対数に変換した指標である。実際には、試合のたびに対戦前の相互のレーティングに基づいて勝利確率(期待勝率)を計算し、これと実際の対戦結果との差異に基づいてレーティングを更新する。この作業を試合のたびに繰り返すことで、いずれ平均的強さのプレイヤーと対戦したときの真の勝利確率、すなわち強さを表す適正な値にレーティングが収束するというわけである。

イロレーティング - Wikipediaより

つまり、単純な勝ち負けでは表現できない実力を、数値を用いて表現できるのがイロレーティングだということです。
このイロレーティングは、初期レートが1500で、自分よりもレートが高い相手に勝てばレートが大きく上昇し、自分よりも低い相手に負ければ大きく減少します。スマメイトをやっている人であればすぐにイメージできるでしょう。

詳しい計算方法などもイロレーティング - Wikipediaに書いてありますので、興味がある人は一度見てみてください。

イロレーティングを用いていると考えた理由

次になぜ世界戦闘力を算出するために内部レートが使われていると考えたかについて書いていきます。それは、オンラインチャレンジで用いられているスコアがイロレーティングを用いている可能性が非常に高く、内部レートでも同様に計算を行っているのではないかと考えたからです。

オンラインチャレンジの初期スコアが15000なので、一般的な計算式で算出されるイロレーティングに10をかけた値をスコアとしていると思われます。また、以下の計算式でレートの上下を算出できます。誤差が20~30程度ありますが、これはレートのみで決めているのではなく試合数なんかも考慮しているからではないかと考えられます。

 R_w :勝った人の元のレート
 R_l :負けた人の元のレート
 R_w' 勝った人の変動後のレート
 R_l' 負けた人の変動後のレート
 R_w' = R_w + \dfrac{1}{10^{\frac{(R_w - R_l)}{4000}} + 1} \times 1350
 R_l' = R_l - \dfrac{1}{10^{\frac{(R_w - R_l)}{4000}} + 1} \times 1350

これはイロレーティングの値に10をかけたものの計算式と一致します。このような理由から、オンラインチャレンジのスコア計算はイロレーティングの計算と同じである可能性が非常に高いと言えます。

そして、オンラインチャレンジでイロレーティングを用いているということは普段のオンライン対戦の内部レートにも同様にイロレーティングを用いている可能性が高いでしょう。もちろん私は開発側の人間ではないので内部事情は分かりませんが、オンラインチャレンジとオンライン対戦のレートをわざわざ別の計算方法で行う可能性は低いと思います。

イロレーティングの分布について

次に世界戦闘力の上下に深く関係しているイロレーティングや内部レートの分布について考えていきます。

ここで、20期スマメイトの結果を見てみたいと思います。
レートごとにグラフにプロットしたのが以下の画像です。このデータはのちょう様のツイートから引用しています。

20期スマメイトのレート分布

この分布を見ると、1300~1600の人数が非常に多く、逆に1000台や2100~の人数は非常に少ないことが分かります。またこの分布にカウントされているのが10戦以上対戦したプレイヤーのみなのですが、実際のプレイヤー数が17151人で、カウントされているプレイヤー数が12377人なので、実際の1400~1600のプレイヤー数はもっと増えると思われます。そしてこの分布は正規分布に近いと言えるでしょう。

このことから、スマブラの内部レートでも同様に、極端に低い・高いレートの人数は少なく、真ん中あたりのレートに人が集中していると予想されます。肌感としてもそんな感じになる人が多いのではないでしょうか?

世界戦闘力の上下と逆VIP

ようやく本題に入ります。

まず上で述べた正規分布の画像を載せます。(正規分布 | 日経リサーチより引用)

正規分布の形

ここの横軸の-4~4の値は今は関係ありません。横軸が内部レート、縦軸が割合を示していますが、大体プレイヤー数がどのように分布しているかを掴めれば大丈夫です。

ここで、平均ぐらい(画像の0あたり、世界戦闘力の600万あたり)で勝ち、内部レートが xだけ上がったときを考えてみます。画像ではわかりやすくするためxを大きくしていますが、実際はもっと小さいです。

平均ぐらいで勝ったとき

世界戦闘力とは?でも述べたように世界戦闘力は自分が何人より内部レートが高いか、を示しています。よって、赤の斜線で示した部分の人を追い越すことになり、それだけ世界戦闘力が上がります。

次に、逆VIPぐらい(画像の-3あたり、世界戦闘力の220万あたり)で勝ち、同様に内部レートがxだけ上がったときを考えてみます。ここで注意すべきなのはイロレーティングでは相手のレートとの差でのみ上下が算出され、多くの場合レートが高くても低くても同じだけ上下するということです。

逆VIPぐらいで勝ったとき

この画像を見ると、内部レートは同様にxだけ上がっているのに、追い越す人数は戦闘力が600万ぐらいのところで勝ったときに比べて非常に少ないことが分かります。

これが逆VIPの正体です。
つまり、内部レートが極端に低い人は少ないため、内部レートが上がっても追い越す人数が少なく、世界戦闘力が非常に上がりにくくなっているということです。
これはいわゆる魔境帯でも同様のことが起きており、極端に高い人も少ないため世界戦闘力が上がりにくくなっています。

よって、逆VIPや魔境で世界戦闘力が上がりにくくなるのは内部レートが極端に低い・高い人が少ないため生じている現象であり、運営が意図して作った仕組みではない可能性が非常に高いと言えます。

まとめ

  • スマブラの内部レートにはイロレーティングが用いられていると考えられる
  • 内部レートが極端に高い・低いところでは世界戦闘力の仕様上上がりにくい
  • 逆VIP・魔境は運営が意図して作った仕組みではない可能性が高い

今回の考察は完全に予想であるため、間違いないとは言い切れませんが、大きく外してもないと思います。また内部レートがイロレーティングであると考察しましたが、もし違ってもレートの分布は多くの場合正規分布に近くなるため、大枠の原理としては同様のことが言えると思われます。

 

長文となってしまいましたがここまで読んでくださりありがとうございました。